俚斗が縦にそれをくっつけて、近くにあった小石で目と鼻を作れば、可愛らしい雪だるまが完成した。

手すりの下にちょこんと立っている姿がなんとも愛らしくて、通りかかった人が「可愛いー」と褒めている。


「北海道に住んでると雪の有り難みがないから、小さい子どもたちでも雪だるまってあんまり作らないんだけど、なんか俺は毎年作りたくなるんだよね」

たしかに雪国では、雪=厄介なものってイメージしかない。

これが東京だったら、雪は滅多に降らないものだから、少なからずみんなテンションが上がったりしちゃうけど。


「さ、小枝? 冷たいよ?」

私が周囲にある雪を集め出すと、俚斗は慌てたように止めようとした。自分だって素手で触ってるくせに。

私はそれを無視するように雪の塊を大きくしていく。水分の少ない雪は高級なかき氷みたいにふわふわとしていて、冷たいというより気持ちいい。


「だってひとりじゃ可哀想でしょ」

「え?」

俚斗の作った雪だるまはたしかに可愛いけれど、そんな感情よりも私には寂しそうに見えてしまった。

雪はうんざりするほどあるし、隣には『まだ作れるよ』と、言わんばかりの丁度いいスペースもある。


慣れない手つきでコロコロと雪を転がして、私はもうひとつの雪だるまを作った。そして同じように小石で目と鼻を付けて俚斗が作ったものと並べるように置く。

だけど頭が重かったのかバランスが悪くて、俚斗の雪だるまに寄りかかるように止まってしまった。


「小枝の雪だるまは甘えん坊さんなの?」

それを見て俚斗が笑う。


私の作った雪だるまは俚斗のものより小さくて、本当に甘えてるように見える。べつに私が甘えてるわけじゃないのに、なんだか恥ずかしい。


「ふたつ一緒なら寂しくないね」

俚斗が雪だるまを見つめながら嬉しそうに言うから、私は「うん」と不器用に返事をしてコートのポケットからスマホを取り出した。