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外の気温はやっぱり東京とは比べものにならないほどの寒さで、顔の筋肉がうまく使えない。
息を吐くたびに白い煙が空へと消えていって、吹雪は止んだけれど灰のように舞う雪がすぐに私の身体を白くする。
美瑛の町は本当に静かで音がしない。
唯一聞こえるのは雪を踏みしめる自分の足音だけ。
ギュッギュッと柔らかい雪の上を歩きながら私は美瑛駅へと到着した。
すでに薄暗くなりはじめている町では丸いオレンジ色の外灯が付いていて、12月らしく向かいの大きな木にはクリスマスツリーのようなイルミネーションも光っていた。
美瑛駅に来るのも久しぶりだけど、なにも変わっていない。
駅舎は美瑛軟石(なんせき)を使っていて、私の感覚で言えばすごく可愛らしい駅。
2面2車線と東京に比べると小さな駅だけど、ここら辺では一番栄えている駅でもある。
旭川行きの区間列車も多く運行しているし、観光シーズンになると〝富良野、美瑛ノロッコ号〟という列車も運行したりする。
緑色のフォルムが可愛い列車で、吹き抜けの窓と開放的な車内が特徴的。
……そういえば昔に一度だけ乗ったことがあったな。
富良野のラベンダー畑を見に行って、あの一面に咲いたラベンダーの香りは今でもはっきりと覚えている。
あの時の私は純粋でまっすぐで、苦しさなんて知らないただの幼い子どもだった。
もうあの頃に戻ることはできないんだと思うと、ひどくまた胸が息苦しくなる。