凪と東京に行った日の夜だった。
長く移動した後特有の疲労感に、自分の部屋でまったりしていたら、家のチャイムが鳴るのが聞こえた。

時計の針は九時を指していて、こんな時間に誰だろうとぼんやり思っていたら、お母さんがわたしを呼んだ。

「くるみ、凪くんのおじいちゃんがくるみに聞きたいことがあるって」

お母さんの不安げな声に、わたしはあわてて下へ降りた。

玄関に凪のおじいちゃんが立っていた。

「こんばんは。おじいちゃん、どうしたの?」

声をかけてハッとした。

おじいちゃんの雰囲気がいつもと全然違う。
にこやかで穏やかなおじいちゃんではなく、ピリピリとした緊張感が漂っていた。

「くるみちゃん」

わたしに呼びかける声に、憤りを必死で抑えようとしているのがわかった。

「今日、凪と東京に行ったんだって?」

おじいちゃんの様子にわたしは怯えて、うなずくことしかできなかった。

確かになにも言わずに行ってしまったけれど、夕方には帰ってきていたし、そんなに怒られるようなことだったかな。