わたしは凪のことが大好きだ。多分、出会った十年前からずっと好きだった。ちょっと人とは違う雰囲気を持っている凪は、わたしにとって最初から特別な男の子だ。

もう十年も一緒にいて、そばにいることが当たり前で、家族と同じような存在の凪。
だけど、やっぱり家族とは全然違う。凪と一緒にいるだけで気持ちが浮つくし、

でも、凪がわたしのことをどう思っているか、全然わからない。

凪は優しい、わたしが困っていたら助けてくれるし、転びそうになったら手をとってくれる。
でも、凪の優しさはわたしだけに与えられるものじゃない。
もともとの性格の良さっていうか、生まれ持った性質からくる種類のものだってことはよくわかっている。

今日も朝から草むしりをしていたら、頭にすぽっと帽子をかぶせられた。
農家の女の人がよく使う、日焼け防止用のつばが大きくて後頭部は布で隠れるようになっているやつだ。

「これ……」

「くるみ用に用意しておいたんだ」

そう言って凪は優しく微笑んだ。

「くるみは女の子なんだから少しは日焼けとか気にしないとね」

「別にいいんだけど……」

そう言いながら、頰が緩んでしまうのを止めることができない。
凪はずっと一緒にいる幼馴染のわたしを、いつでもきちんと女の子扱いしてくれる。

十一時半になったら、凪の家に戻り、また三人でお昼を用意して食べる。今日は冷やし中華だ。

今日は凪が大きな鍋で麺を茹でる。
卵やハム、キュウリやトマトまで千切りにして、おじいちゃん特製のゴマだれをかけて食べた。

凪の家で食べるご飯は美味しい。

畑で採れたばかりの野菜や、出汁にこだわるおじいちゃんの味付け、畑仕事後の疲労感……、理由はいろいろあるけど、やっぱり三人で一緒に作って食べるから、「美味しいね!」って凪と笑い会えることの喜びがおいしさを増幅させてるんだと思う。