遥が体ごと私の方に向き直し、膝の上に乗せていた私の手に自分の手を重ねた。
「私はあかりが大好き。親友だからとか幼馴染だからとかじゃなくて、昔からずっと、川瀬あかりを大切に思ってる。それは、これからも変わらないよ。あかりは私に優しさと勇気をくれた。だから、もしこれからあかりが立ち止まったり悩んだりした時は、どこにいたって駆けつける」
変わらない大きな瞳は、暗闇だというのに輝いて見えるくらい綺麗で、遥の嘘のない言葉は真っ直ぐ私の胸に届いた。
卒業式まで我慢しようと思っていたのに、遥の温かさが私の涙腺を弱らせる。
「ありがとう……。私も、私も遥が大好き。遥がどこにいたって、私はずっと遥を応援してるから」
本当はもっと沢山言いたいことはあるけれど、涙で上手く言葉が出ない。
また卒業式の日に、ちゃんと伝えよう。真人にも、そうちゃんにも……。
「いつまで喋ってんだよ」
うしろから聞こえてきた声に驚き二人同時に振り返ると、腕を組んで見下ろしているそうちゃんが、私達が座っている一段上にしゃがみ込んだ。
「そろそろ交代な」
そう言うと、遥は「はいはい」と言って立ち上がり、私の頭をぽんぽんと優しく叩いてから階段を上って行った。
「え?交代?」
キョトンとしながら小さくなっていく遥の背中を見つめていると、そうちゃんは私の腕を掴んで立ち上がらせた。
「見せたい物があるんだ。一緒に来て」
「あっ、うん。いいけど……」
階段を上がると、テントの中で本を読んでいる真人の姿がチラッと見えた。
先に戻った遥はテントの前に立ち、私に向かって手を振っている。よく分からないけれど、私も手を振り返した。
神社は山の中腹よりも少し上にあって、更に上へ行く階段を上り始めたそうちゃん。
「暗いから気を付けろよ」
「……うん」
戸惑いながらもただ付いて行くことしか出来ない私は、腕を掴まれたままゆっくり階段を上った。