森の中でなければ沈みゆく夕日が見えている頃だろうけれど、木々に囲まれたこの場所は薄暗く、もう完全に光が遮断されている。


そうちゃんはただ私の背中を押す為に言ってくれたんだろうか。それとも他になにか理由があるのか……。



「よー、どうだ? 盛り上がってるか?」

タイミングが良いのか悪いのか、ビニール袋を片手に下げた悟朗さんが沈黙を打ち破り、大きな声を上げてやって来た。


「なんだ、どうした? 顔暗いぞ。最後の思い出に浸ってんのか?」


ビニールから取り出したお肉をテーブルに置き、テキパキと準備を始めた悟朗さん。


「とりあえず、お肉食べようよ。話は後でもできるしさ」

空気を読んだ遥は悟朗さんの隣に行き、バーベキューの準備を手伝っている。


私が気を遣わせちゃったのかもしれない。きっと、凄く困った顔をしていたんだ。


「遥の言う通り、颯太とは後で二人で話せばいいから、まずは楽しもう」

耳打ちをしてきた真人が私の肩にポンと手を置き、微笑んでくれた。


せっかくの思い出作りなのに、私がこんな顔をしていたら台無しだ。



それから私達は、短い時間でバーベキューを楽しんだ。悟朗さんは火を起こすのがとても上手で、『無人島に一つだけ持っていくなら悟朗さんだね』と言った遥の言葉にみんなで笑ったり。

散々話したけれど、まだまだたくさんある思い出話に再び花を咲かせたり。


もう全部出し切るくらい大声で、二度と訪れない今この瞬間を忘れることのないよう胸に刻み込むかのように、お腹が痛くなるくらいとにかく笑った。