「あの人達が牙を突き立てるなら、私はその牙磨いて笑ってあげちゃうくらい強くなりたい」

『・・・へえ』

「ちょっとそこは「なれるよ」とかでしょ。なんでアオはそんなんなの」

『キミナラナレルヨー』

「うぜー。ちょーうぜー」







相変わらずの言い合いに紛れる穏やかさに身を休めた時、不意にあの瞬間、私を救ってくれたアオの声が頭の中に木霊する。








「・・・アオがあの時、私の名前を呼んでくれなかったら私きっと今もっと嫌な感情ばかりだった」


あの声のおかげで、今こうして笑える自分がいる。


「・・・ありがとう、アオ」

『その調子でもっと崇めよ』

「前言撤回」

『ゼンゲンテッカイ?』

「あははっ、ばーか!」






私の笑いに釣られてアオも拗ねながらも笑う。

結果は最悪だったけど、その過程に見いだせる物は私を強くしてくれるものばかりで、改めて大切なものを気づかせてくれたのだから、終わりよければ全て良しとしよう。







『はい到着』

「あざーす」

『じゃ、俺は網返してくるんで、身を清める如く洗ってて下さい』

「はいはい」







中庭の水道に私を降ろしたアオはUターンして歩き出す。そのだるそうな後ろ姿を見守りつつ、蛇口を捻って冷たい水が弾けるそこに汚れた足を滑り込ませた。