アオの手が、そっと離れて視界が明るくなる。目の前には静かな瞳で、無表情のまま私を見つめるアオ。だけどそんなアオから滲み出るのは、何処か覚悟を決めたような冷たい何か。
アオは固まる私の頬をそっと撫でて、今度は目隠しをすることなく、私の唇に再びキスを落とした。
閉じた瞼の先、アオの長い睫毛が理性と戦うようにたまに揺れて、くっと目頭に力が入る度に、角度を変えて甘いキスを落とされる。
「ア、オ」
唇が離れたその隙間にアオの名前を呼ぶ。アオはゆっくりと瞼を持ち上げ、私を見つめると、悲しそうにその瞳を細めて私からゆったりと距離を取った。
『──ハルの頭ん中、一瞬でも俺だけになればいいのに、って』
震える指で撫でられた唇はアオの唇の余韻だけが残っている。
『ハルの何もかもをぶっ壊して、ぶっ壊して粉々にして、俺だけしか見えなくなるくらい、俺だけのハルになればいいって、』
アオから瞳が逸らせずに、ひたすら涙色の瞳を見つめ返すことしかできない。