「寝ます寝ます。私右側で寝るんでアオ左側でどうぞ。間違えてサンドバッグにしちゃったらごめんね」

『俺、ソファーで寝るから』

「は?ソファーで寝れないって部室で言ってたじゃん」

『うっせーな。部室のは小せえんだよ』

「それもあんま大きさ変わんないけど」

『・・・うっせ』





こっち見ろよ。と視線に熱を込めてもアオはきっとそれに気づいていながらも無視を決め込む。いつも余裕で、私の先を歩いて、私に何一つ本心を見せてくれない。そうやってこっちを見ないアオに心底苛立つ。





「だったらアオがベッドで寝なよ。私がソファーで寝るから」

『そんなことできるかアホかお前』

「だったら一緒に寝ればいいじゃん。アオは私のことなんとも思ってないんだから、別になんだっていいじゃん」





すると、アオが髪を乾かすために動かしていた手をはたり、と止めた。視線はまだ私に向けられない。少し濡れた髪に、乱れた前髪がアオの綺麗な横顔に影を落とす。






『─────だったら、1つだけ聞かせて』






その掠れた声は今まで聞いた事がない程に、艶めかしく、妖艶で、危ない。でもそれが、一番今までのアオの中でアオらしくて、惹きつけられて逸らせなくなる。