泣きそうな静川さんの声に胸がぎゅ、と痛くなる。そんなこと言わないでほしいと思うのに上手く喉を伝って言葉が声にならない。
『本当にずるい奴なんです、私は。人が弱ってる時に漬け込んで、如何にも優しい人ぶってる。ずるい、奴。落ち込んでるの見て、先回りして先回りして、その人が欲しがってる言葉をただ垂れ流してるだけの、そんな1番ずるい奴なんです』
静川さんが眼鏡を邪魔そうにずらして、涙を両手で拭う姿に下唇を噛み締める。
そんなことないよって、言いたい。そう思ってるって本心だよって、伝えたい。でも上っ面に聞こえないかな、偽善者って思われないかな。
どうしよう、と下唇を噛み締めたまま隣のアオに視線を向ければ、やけに清々しい顔をした奴と目が合う。なんでコイツはいつもこんなに余裕綽々なんだよちくしょう。
なんて思っていれば、アオは無言のまま私に手を伸ばす。そして私の頬を軽く摘んで、むにーっと優しく伸ばす。
『ハル。言わなきゃ誰にもわかんねーよ?』
私の心の芯を見抜いたように囁くアオ。優しさを帯びた瞳を細めてゆったり笑っている。こてん、と傾げられた首から柔らかい雰囲気が滲み出て、私は素直に頷く。