「はーい買ってきて」
『やだ。俺別に喉乾いてねーもん』
「ジャンケンで負けたくせに!」
『負けたら買ってくるなんて約束してない』
「負け犬の遠吠えかコラ」
『トイプードルに似てるってよく言われる』
「どうでもいい。早く買ってこないと窓から少女漫画全部投げ捨てるよ」
机の上に積み重ねられた少女漫画を鷲掴みすれば、アオはギョッとした顔から一転にっこりと微笑んで態度を180度変えた。
『何飲みたい?』
炭酸!と元気よく答えた私にアオはにこやかに微笑んだまま「振っとく」と付け足して自動販売機に行くために立ち上がって歩き出した。
『ここで何してんの』
双眼鏡を掃除していれば、扉の前でアオが誰かを見下ろして声を掛けた。華奢だが背の高いアオで向こう側の人物は見えない。
「アオ?どうしたの」
私が声を掛けたがアオは暫くその人物を見下ろし黙っていた。そして私に振り返り「依頼人」とだけ言い捨ててその人物を避けて出て行ってしまった。