僕をじっと見つめるその顔を見つめ返したら、それだけで母さんは壊れてしまうと思った。

なにより、すっかりやつれて青白くて、髪の毛だって肌だってボロボロな母さんの姿が痛々しかった。

僕はそんな母さんを見ていられなかった。

「朔ちゃん」

電気を消して布団に潜ると母さんが僕の名前を呼んだ。

日中は眠り続け、夕方に目を開いてからもずっと見つめ続けていただけで、僕がその日、母さんの声を聞くのはこれが初めてだった。

その声は月明かりに照らされた部屋の中で、とても心地よく僕の耳に響いた。