それは愛着とは無縁のつまらないものでしかない。

「僕さ、このバス停がなんだか無性に好きなんだよね」

電柱の次はバス停か。

ほとほと朔の好みは理解し難い。

「いつかはこの回転椅子に座りたいなって思いながらも、いまのいままで一回も座ったことがないんだ」

「は?なんで?座りたいなら座ればいいんじゃないの?」

「僕は知らないからさ。

このバス停が使われてるのか使われてないのか。

もし使われてるのだとしたら勘違いせちゃうでしょ?

そう思うとどうしても座ることができなかったんだ」