この町では大きい部類に入る道路脇を。

小さい頃夢中になって遊んだ廃工場の横を。

ボッタクリますよって店構えのパチンコ屋の横を。

途中で通った本屋さんの向かいで同級生を見かけた。

多分あっちも私に気づいたと思う。

少し距離ができてから学校で聞く下品な笑い声が大きくここまで届いたから。

「ハナ!電柱だよ!」

二十分もの間無言で歩き続けた朔が久しぶりに発した言葉はそれだった。

「うん。そうだね」

朔が指差しているのは間違いなく電柱。

地元の人はもちろん他県の人だって気に留めないただの電柱。