「僕は親戚に引き取られることになった。

色々な家を転々としたんだよ。みんなきっといい人だったんだと思う。

でも、その時の僕にはそんなの汲み取る余裕がなかった。

だから壁を作った。踏み入れられないように。傷つかないように。

僕の中に様々な予防線をいくつも張り巡らせた。

周りの大人たちは最初こそ気を使ってくれたけどその内それも崩れていった。

当たり前だよね?いくら血が繋がってたってそん奴誰だってお断りだ。

分かってた。僕だってちゃんと分かってたけど……。

でね、最後はどこも同じ。どの家庭でも夜になると母さんの悪口を言うんだ。

男を見る目がないだの。母さんの言動に原因があっただの。夜の仕事なんかで出会った男を信じるからだの。

出てったのは父さんなのに。母さんは身内のはずなのに。

大人はみんな自分の保身のために簡単に身内を生贄にした。

僕の前で母さんの悪口を言わなかったのはせめてもの良心なんだって分かってるけどさ、やっぱりそれを見てしまった後では僕はあの人たちを信じるだなんて無理だった。

そうしている間に僕は本当にたくさんの家を転々としていた」