「母さんは元々体が強くはなかったんだ。 それでも全力で僕を育ててくれた。 強くない体で母さん一人で。 僕はね、父親の顔を知らないんだ。 母さんのお腹に僕が宿ったのを知った父さんは何も言わずに消えたんだって。 もちろん母さんから父さんのことは聞いてるし、それなりに知名度のある職業の人だから会おうと思えば会えたんだけど……。 僕もそんなに大人じゃないからさ。 母さんと僕を捨てた奴になんて会うつもりはなかった。 だから、いまのいままで僕は父さんに会ったことはないんだ」