もしかしたらなんの感情もなくただ眺めているだけなのかもしれない。
だってシヅキには過去も未来もないんだ。
なんだか心臓の辺りがきゅっとなる。
それはつまり、現在も、いまもないってことなんじゃないんだろうか。
だから記憶も理由も、自分のことすら分からずにここにいるのかもしれない。
そうだとしたら幽霊とはどんなに悲しい存在なんだろう。
いま隣にはシヅキがいるのに。
俺には見えているのに。
シヅキには過去も未来もそれからいまも、何もないんだろうか。
シヅキの瞳がゆったりと俺を捉える。
吸い込まれてしまいそうなほど深い黒の、とても澄んだ瞳だ。