「なあに?」

部屋の隅に座ったままシヅキが嬉しそうに囁く。

「なんでもないよ」

「嘘。いま私のこと見たでしょ?」

「シー」

「大丈夫。他の人には私の声は聞こえないみたいだから。なんか悪いことしてるみたいだね、私たち」

「何が?」

「家族には秘密で、この部屋には私と春人だけ」

「……」

「ドキドキするね」

「しないよ」

「あれ?春人ってば見かけによらずイケイケなタイプ?」

「……違う」

「じゃあ彼女がいるとか?」

「いないよ」