本当に、全くと言っていいほど、シヅキの存在に恐怖心は一切なかった。

「まず幽霊に見えないからなぁ。普通すぎて話しかけたくらいだし」

「そうなの!」

立ち上がったシヅキの声がすぐそばで聞こえて心臓が跳ねる。

「春人には私が見えてるんだよね?」

「見えてるけど?」

「他の人には私は見えてないみたいなの。声も聞こえてな
いしもちろん触れることもできなかった。でも春人にはちゃんと見えてて、声だって聞こえてる」

ああ、だからか。

だから話しかけた時あんな態度をとったのか。

「春人は昔から幽霊が見えたの?」

「見たことないよ。言っただろう。本当にいるんだなって」

「そっか。そうだったね。ねえ、春人ー」

シヅキの瞳が小さく揺れる。

「付き合ってくれないかな?」