慣れた。

立ち上がるから手を貸してくれとか、きっとそんなニュアンスで手をだせと言っているんだろう。

そう思った。

シヅキとの距離を縮めて片手を差し出す。

俺の手に重ねるように、シヅキはゆっくりと色の薄い手を伸ばす。

「え……」

重ねられたその白い手は、触れた実感のないまま俺の手をすり抜けた。

差し出したまま何に触れることもなく、ただ宙に浮いた手を眺める俺にシヅキは悲しそうに笑って言った。

「私、帰る場所が分からないの」