俺はその人を構うことをやめて買ったばかりの缶を開け、甘すぎるコーヒーを渇いた喉に流し込んだ。
ちらっと横を伺うとその人は少し悲しそうな顔をしてまだ空を眺めている。
何か嫌なことでもあったんだろうか?
もう一度その人の顔を確認する。
歳は変わらないはずなのに、俺はその顔に見覚えがなかった。
辺りを見渡してもあるのは俺の自転車だけで、その人は何も持っていないようだった。
この辺に住んでるのかな?
でも俺はその人を知らない。
見たこともない。
だけど周りには自転車もなければその人の近くには鞄すらもない。
きっと遠くからこの丘を訪れてきたわけでもないのだろう。
最後の一口を流し込む。
考えったって仕方ない。
俺には関係ないことだ。
「そこに座ってると危ないよ」
なのに俺はどうしてもその人を放っておくことができなかったんだ。