ソファーの上に置いたままにしていた鞄からスマホを取り出して、俺は初めて、誕生日のケーキを写真に収めた。
「あら何?写真?」
「ああ、なんだか残しておきたくて」
一年に一度訪れる誕生日。
俺の生まれた日。
毎年同じ。
父さんがいて母さんがいて、海がいて空がいて。
毎年同じ。
だけど今年は昨年までと少しだけ違うから。
今朝までここにはもう一人居て、家族が集まる食事の時間にはソファーに座って、他の誰に見えていなくても俺にはきちんと見えていた。
初めて誰かを好きになって、その人も俺を好きだと言ってくれた。
大好きな人が「おめでとう」と言ってくれた。
いつもより少しだけ特別な誕生日。