「春人。ギリギリまで言えなくてごめんね。怒ってもいいけど許してね」

「怒らない。怒らないから。お願いだ。もう少し一緒に居てくれよ」

空に大きな雲がかかって一瞬、辺りが夜みたいに暗くなる。

「私にはもう、あまり時間が、ないみたい」

そう言ってシヅキは静かに、穏やかに微笑んだ。

何もかもが遠くに感じた。

すぐ近くで囀っていた鳥の声も。

俺たちの横を通り過ぎていく車のエンジン音も。

顔を撫でる風の音も。

シヅキの声も。