ああ、違うんだ。

俺は君を困らせたいわけじゃない。

笑っていて欲しい。

だけど準備ができていないんだ。

だからもう少し。

「春人。私ね、本当は全部思い出してたの」

もう少しだけ時間が欲しい。

「学校案内の本を見た日、あの時、本当は全部思い出したの。だけど受け入れたくなかった。私はまだやりたいことがたくさんあるの。まだ死にたくなかったの」

「すればいい。シヅキのしたいことなら全部。俺が付き合うから。まだ一緒にいろんなことをすればいい」

「ありがとう。春人はいつでも私のために協力してくれたよね」

「これからもするよ。いくらでも協力する。シヅキ、あとは何がしたい?何をしよう?」

ああ、またそんなふうに笑って。

いつからだろう。

いつから君はそんなふうに笑うようになっていたっけ。

「充分だよ。もう充分なの。私には」

「シヅキ!」