「春人。あそこで待ってて。すぐ戻ってくるから」

シヅキの指差すさきにはぽつんと一つのベンチが置かれていた。

だけど俺はシヅキを無視して前に進む。

そうだ。

俺は俺の意思でシヅキに協力してきたんだ。

だから学校にだって俺の意思で行く。

シヅキが待っててと言っていたって関係ない。

俺が行きたいんだ。

「春人!」

いつもは穏やかに呼ぶその声が大きく、小さい子供に言い聞かせるように俺の名前を呼んだ。

「ここまで一緒に来てくれただけで十分だよ。ありがとう。すぐに戻ってくるから。春人はここで待ってて?」