俺は家族が好きだ。
父さんも母さんも、海も空も。
でも一人になりたい時だってある。
だから小学校に上がるのと同時に自分の部屋をもらった。
だけど不思議とシヅキと出会ってから一人の時間なんて全くないのに、それでもそのことに不満はなかった。
初日こそ勘弁してくれと思った。
だけどいまはシヅキがいることが当たり前で、そのことになんの不満もない。
「春人は素敵な街に住んでるね」
声に振り向くと当たり前にシヅキがいる。
そのことに不満どころか安心感さえ感じていた。
なのに懐かしむように遠くを見つめるシヅキの姿に胸が痛んだ。