「だけど困るな。春人が優しくて、ここがとても居心地がいいから」

言葉を切ってシヅキが俯く。

「私はずっと、ここに居たくなる」

「居ればいいよ」

シヅキの癖が移ったのか俺は低くなった天井を見上げていたけど、シヅキが俺を見ているのが気配で分かった。

「シヅキが成仏できる日までここに居ればいい。いまさら追い出したりしないよ。好きなだけ居ればいい」

「……ありがとう」

隣を見ると深い黒の瞳を潤ませて、だけど笑顔でシヅキはそう言った。