「変わらないだろって言わないの?」

「変わるだろう」

「変わる」

「シヅキがそう言うんだからそれでいいよ」

「春人って優しいよね」

いつの間にか起き上がっていたシヅキの顔が近くから俺を覗きこんでくる。

「意思が弱いだけだよ」

そう、俺には芯がないんだ。

海と空が生まれてからずっと、守らなきゃと自分以外の人に優しさとか思いやりとかーその頃はまだ双子に対してだけだったけど、そういったものを持つようになっていた。

そうしたら周りが変わった。

海と空に優しくすることで大人たちが俺に優しくなった。

凪に優しくすることでおばさんが俺を優しく褒めてくれた。

他人に思いやりを持つことで信頼され、俺にも優しさが返ってきた。

そのことが嬉しくて心地よかった。