「渋谷に行きたいんだっけ?」

「それはいいや。きっと人がたくさんいるから」

「じゃあどこに行こう?」

「考えとく」

なんだか変だ。

俺が話しかけなきゃ喋らないなんて。

さっきまでのシヅキはあんなにお喋りだったのに。

だけどもう「大丈夫?」とは聞かなかった。

きっと君は大丈夫って言うから。

だから聞けなかった。

「春人」

「どうした?」

「帰ろうか」

「もういいのか?」

「うん」

家までの道もシヅキは静かで、俺たちはただ黙って並んで暗い道を歩いた。