「それ俺がやるんだよな」

「そうなるのかな」

「ハードル高いな」

「男子高校生一人でってなるとちょっと怪しいかもね。じゃあカラオケは?」

「その中ならまあまだまともだけど、好きな歌とか覚えてるのか?」

「うーん……。聞いたら思い出すかも?」

「あやふやだなぁ」

「春人が歌ってるの聞いてるよ」

「一人で歌うのかよ」

「行くだけ行ってみよう」

ぱんぱんとスカートに付いた土を払いシヅキが歩きだす。

「おい、勝手に行くな」

「いいからいいから」

歌うのは俺なのにシヅキはそう言いながら足を止めようとはしなかった。