平日の映画館は話題作にもかかわらず割と空いていた。

だけど恋愛ものなだけあって来ているのは女の子同士のグループとカップルばかりだった。

電車に乗っている時に感じた何倍もの居心地の悪さに苛まれながら、だけど隣ではシヅキが嬉しそうにはしゃいでいた。

シヅキは一番前で観たいと言ったけどそこは意地でも譲らなかった。

だってこの中で。

一番前で。

男一人で。

恋愛ものの映画とか。

そんなのさすがに恥ずかしすぎる。

だから「一番前がいい」と駄々をこねるシヅキを無視して一番後ろの席に腰を落ち着けた。

「どんな内容なんだろうね」

諦めたのかシヅキが俺の隣に座ってこれから始まる映画に想いを馳せている。