私は更に固まった。
『恋に落ちてた』なんて言葉、漫画や本の中だけのものだと思ってた。
非現実的な言葉に鼓動を早めながら、赤くなっているであろう顔を隠すように俯く。
しかし彼は逃がすつもりがないのか更に続けた。
「雪代は俺のこと、どう思ってる?」
「素敵な人だな、と。尊敬してます」
もっと気の利いた言葉を言えないのか。
自分の発した月並みな言葉に呆れもしたけれどそれが素直な感想だったから仕方がない。
桧山さんはその容姿もそうだけれど、それを抜きにしても尊敬のできる人だ。
丁寧な働きぶりは上司からも取引先からも評価されているし仲間からの信頼もとても厚い。