上を見上げるとそこに浮かんでいたはずの雲が跡形もなくて。 慌ててコートを掴み取り、でもそれを着ることもせず腕に抱えたまま外へと飛び出す。 やたらと音の響く階段を足を縺れさせながら駆け降りて。 遮る物のない歩道へと出る。 立ち止まり。 深呼吸をして。 空を見上げる。 そこには雲ひとつない青空がどこまでも広がっていた。