「俺はさ、なかったんだよな。

なりたいものも。したいことも。

なんとなく東京で就職すれば安定した生活を送れると思って出てきただけで。

逃げてきたんだ。色々な責任から。

でも最近の要見てて、このままでいいのかなって思って色々考えたんだよ」

兄貴のそんな姿を初めて見た。

いつも余裕な顔をして、いつだって迷いなんかなく進んでいると思ってた。

それが大人なんだと思ってた。

「結婚するんだ。俺」

「え?」