「はい。覚えててくれたんですね」 「この仕事をしてると人の顔を覚えるのが得意になるんですよ。 ご注文はお決まりですか?」 「あ、ホットコーヒーお願いします」 「ホットコーヒーですね。 かしこまりました。少々お待ちください」 知っている店員がいて、覚えててくれてよかった。 たった一回、それも言葉も交わしてない人だけど。 知っている人がいることで少しだけ緊張が解れた。 鞄からクロッキーをだしてさっきまで描いていた絵を確認した。