「菜乃花さ」

近所の男の子や近所のお姉さんとしてじゃなく。

俺は俺として菜乃花は菜乃花として。

それぞれが一人の人間として聞きたかった。

「やっぱさ。なんかあったんだろ?」

俺も正直に話すから。

誤魔化さずに話すから。

菜乃花にも誤魔化して欲しくなかった。

「大丈夫だって。それになのねえでしょ」

菜乃花の言葉が胸を冷やす。

でも大丈夫。

これくらいなんともない。

立ち上がろうとする菜乃花の腕を掴んで引き止める。