そこに座るといやでもなのねえを感じる。

髪から香るシャンプーの匂いも。

触れそうで触れないその距離の中にあるなのねえの体温も。

それなのにそれを阻むようになのねえの声が近い位置で耳に届いてくる。

「修くんのところでやればいいのに」

そう言いながら課題を覗き込み、いつもより近くからそう囁く。

心臓がバクバクとうるさく音をたてる。

あまりにもうるさく鳴るものだからその音が聞こえてしまうんじゃないかと思った。

だから必死に課題を解いた。

解いて、少しでも心臓の音を隠すように強めに答えを書きつけた。