頭の中にいままでの桧山さんとの思い出が次々と思い浮かぶ。

桧山さんと出会って私は幸せだった。

とても満たされていた。

彼を失いたくない。

『いままで見せてくれない子なんかいなかったんだけどな』

言われたばかりの言葉を思い出す。

……違う。

私に選択肢なんてない。

あるのは一つの答えだけ。

「……どうぞ」

それだけ言うのが精一杯だった。

私は鞄からスマホを取り出しロックを外してそれを桧山さんの手元に差し出した。

「俺は菜乃花が大好きなんだよ。

だから心配になるし菜乃花のことならなんでも知りたくなる。

出来ることならずっと一緒にいて守ってやりたい。

知らないと守ってやれないだろ?」