怒鳴るではなく静かに、ゆっくりと。

でも冷たく這うような声で桧山さんはそう言った。

「いままで見せてくれない子なんていなかったんだけどな。

俺は菜乃花のこと心配してるだけなんだけなんだけど。

ほら、知らないと守ってやることもできないだろ。

それとも俺になんて守られたくない?」

初めて聞く彼のその冷たい声に不安と恐怖が襲ってきた。

何か言わなきゃ。

終わっちゃう。

頭ではそう思うのに言葉が詰まって声にならない。

沈黙が私を責めるように辺りを満たしていく。

ここで選択を間違えてはいけない。

私はいま分岐点にいるんだ。

それだけは理解できた。