だけど少しの間を置いて耳に届いたのは答えじゃなかった。
「大丈夫だよ」
俺の耳に届いたのは助けを求める言葉でも弱音ですらなく。
強がるばかりの嘘だった。
腹が立った。
こんな状態になっても強がるその人に。
こんな時に手を差し伸べることさえ許されない自分の未熟さに。
たっぷりと残っているコーヒーを一気に飲み干した。
まだ熱いそれが喉をヒリヒリさせながら胃に落ちていく。
熱さを振り払うように勢いよく立ち上がって床に置いていた上着を羽織る。
靴を履きノブに手をかけ力を込める。
この場所に止まるのが辛かった。
あんなに焦がれていたのにいまは早くその人から離れたかった。
だけどー