それなのにー

いつの間にか見ることすらしなくなってしまっていた。

見れなくなっていた。

それどころか好きだったはずのこの場所でさえ。

私にとってはとても苦痛にしかならなかった。

どこかの家から漂ってくる夕食の匂いも。

話し声とともに近ずいては離れていく足音も。

明るい日の光と共に訪れる朝も。

静かに寝静まった夜も。