「様子って?」
「兄貴が『菜乃花と連絡取れない』って言ってたから」
さすが兄弟だ。
モノマネがうまい。
じゃなくて、
「そっか。ごめんね。本当に忙しくて」
なるべく自然に微笑む。
大丈夫。
ちゃんと笑えてる、はず。
「なんで……」
かなちゃんが俯きながら小さな声を漏らす。
だけどその声をうまく聞き取れない。
「え?」
聞き返すのとほぼ同時にかなちゃんが立ち上がる。
窓を開け、備え付けの小さなバルコニーから外を見つめながら
「いいね、ここ」
と、今度は聞き取れる声で褒めてくれた。
「うん。この景色に一目惚れで借りたんだ」