電話じゃなんだから、ぜひ一度あってお話しませんかと言われ、わたしは文詠社を訪れていた。

現れた横澤さんは、いかにもファッション誌の編集者といった雰囲気の洗練された女性だった。

出版社に足を踏み入れることがはじめてで怖じ気づいているのに、立派な応接室になんて通されてしまって、どう振る舞っていいのかわからなくておどおどしているわたしを見て、横澤さんはにっこり微笑んで言った。

「思ってた通りの女の子で、うれしいです」

思ってた通りって、どういうことだろう……。

褒め言葉だと思っていいのかな。

「宮下さんのインスタ、自分の身の回りの世界をきりとって、すごくファンタジックに加工するでしょう。身近なものに向ける目線が優しくて、きっときちんとした優しい女の子なんだろうなって思ってたんです。時々ね、大人のわたしでも、心に刺さるときがあって、すごく泣きたくなったりするの」

プロの編集者の人にそんな風に言ってもらうと恐縮してしまう。

横澤さんは今出ている『look at me』最新号を開きながら説明してくれた。

九月末に出る十一月号のカルチャー特集でインスタグラムを取り上げることになった。インスタグラムのやり方、楽しみ方を紹介するのはもちろん、いま人気のアカウントを紹介するページを作り、そこでわたしのアカウントを紹介したいというのだ。