「日比野くんは、なにか小さい頃にそういう長いお話を読んでもらった記憶はない?」


「……あるかも」


「その絵本のタイトルは?」


「うーん、タイトルは覚えてないんだけど、話の内容なら」


 彼女は目を輝かせながら、それこそ小さい子どもが絵本を読んでとねだるような目で、僕を見る。


教えて、と口には出さずとも彼女が言っているのがわかった。


「うさぎのぬいぐるみが男の子にすっごく大事にされていて、夢の中で本物のうさぎになって男の子と一緒に冒険するっていう話」
 

彼女の目が、輝いた。

「それってもしかして、『きみといっしょにいられるだけで』?」