「そう言われるとなんか恥ずかしい気もするけど、がんばろうっていう気になるよ」


 僕はつぶやくように言った。


彼女はなんだか嬉しそうだった。


「だから私、日比野くんの話を聞くのがとっても楽しみだよ。

自分の物語を生きている人の話を聞くとその人のことを応援したくなるし、

自分もがんばろうって思える」


表情や今の言葉から、森下さんの僕を応援する気持ちも伝わってきて、僕も嬉しくなった。

そして、不意に思い浮かんだ言葉を口にした。


「森下さんは、小さい頃からそうやって物語に親しんできたんだもんね」


彼女はハンカチで汗を拭きながら、

「うん、そうだね」と答えた。もう完璧に夏だというのに、彼女の肌は白いまま。


季節感が周りと違っているように感じるし、病弱そうにも見える。

汗を拭くために後ろ髪を持ち上げたときに見えた首筋なんて、雪みたいに真っ白だ。