「……夢でも、こんな感じで僕はここに座っていたんだ。

隣には女の子がいた」


僕は、夢で見たことをありのまま森下さんに伝えた。



いつも絵を描いていたノートの表紙に【だれかの】と書かれていたこと。



そのノートを、女の子に見せていたこと。

彼女は、とても嬉しそうに笑っていたということ。

それを見て僕が、安心したということ。




そして今の僕が、その子のことを、心から思い出したいと思っていること。




森下さんはそれを、ゆっくりと頷きながら聞いてくれた。



「日比野くんだったら絶対、その子のこと思い出せるよ」




森下さんが笑った顔が夕焼けに染まっていた。幼い子に笑いかけ、語りかけるような表情だった。



でも、心からそう思ってくれていることが伝わるから、
悪い気はまったくしない。



むしろ、そうやって可能性を信じてくれる人と出会えることは、幸せなことだと思う。





僕はこの一瞬も、


今日のすべても、


ずっと覚えておきたいと思った。