庭園の中にある小さな山も登った。ゆるやかで長い階段を上ると、頂上には東屋があり、そこから庭園を見下ろすことができる。

上から見ると、池の水面やたくさんの草花が輝いていた。



森下さんが少し疲れている様子だったので、僕らはそこで休憩をすることにし
た。


「大丈夫?」


「……うん、平気。ありがとう」


彼女は笑ってそう答えたあと、

「でも、もう少しここにいたいな」と言った。

この景色が気に入ったのかもしれない。

頂上には、僕らしかいなかった。


「見晴らしがいい場所だね」


彼女はハンカチで汗を拭きながら言った。

下の景色を見下ろしながら、「そうだね」と僕は答える。



「季節によって全然景色が違うから、一年中来ても飽きないよ」


「そうなんだ! 今の季節は、本当に一面緑って感じ。でも、小さい滝もあったね。あのあたりだった?」


彼女はさっき僕らが歩いていた森の中を指さした。



「うん、そうかも」


「……ご両親とも、一緒にこうやって眺めていたのかな」