答えは見つかった?」


「うん。……まず、サッカーは仲間のため。

あと、監督のため。

監督と話して、自分がしてもらっていることがたくさんあったことに気が付いたんだ。

そうすると一気にさ、この人のためにもがんばりたいって思えたよ」


隣に座る彼女を見ると、ひざから下を軽く前後に振りながらただ嬉しそうに聞いてくれていた。なんだか子どもみたいでかわいい。


「あと、誰かのためにがんばるのも、結局自分の成長とか、新しい気付きとか、自分のためになるんだってことにも気付いた。

これは、君のおかげだよ」


「私?」


 彼女は目を丸くして、ベージュの眼鏡の位置を直した。


「うん。森下さんのためにと思って描き始めたけど、最近じゃ僕が得ているもののほうが多いんじゃないかって思うくらいなんだ」


彼女の方に少しだけ体を向けて小さく頭を下げつつ「ありがとう」と言うと、彼女も礼儀正しく膝を揃えて僕に「こちらこそ」と頭を下げた。

その動作がかわいらしい。


「あの男の子が、これから自分のどんな可能性を見つけていくのか、すごく楽しみだよ。

僕も、あの話を読むまで、ただ皆のためにガムシャラにがんばろうとしていたんだ。


でもそれだけじゃ足りないことを学んで、今では自分の可能性についてしっかり
と考えながら練習していこうと思った。


まだ、それは見つけられていないけどね」


「日比野くんのいいところは、そういうところだね」


「え?」