「どんなこと?」


気が付くと、日は沈み夜になっていました。男の子と女の子は、白鳥とならぶようにとびながら話をしています。


白鳥は、まっすぐ、力強くとびつづけていました。


女の子は、上を指さしました。


「あの星座がなにか、わかる?」


男の子は女の子が指す方向を見上げた。

そこには夏の大三角形が輝いていました。そして、女の子はその中で一番大きな星座の名を口にします。


「はくちょう座?」

「そうよ。お母さんは、彼にそれを見せて、こう言ったの」

『私のお父さん、つまりあなたのおじいちゃんはね。

冬をこして、シベリアに戻ろうとする直前に、むれをおそったハヤブサから私たちを救ってくれたの。

おじいちゃんは、そのときにむれからはなれてしまったわ。


でも、おじいちゃんは昔私に言ってくれていたの。

もし、私たちがはなれることがあったとしても、こうやって夜空を見上げれば同じはくちょう座を見ることができる。

そう思えば、はなれていても、近くにいると思える』


 女の子は、男の子をまっすぐ見つめて続けます。


「だから、あなたにも同じことを言うわ。
『もし、これからわたしたちがはなれることがあったら、夜空を見上げなさい。そして、はくちょう座を見るの。わたしも、そうするわ。そうすれば、さびしくもなくなる』ってね」


「彼は、それを見てさびしい気持ちをなくすことができたんだね」


「それから彼はまた、冬に家族や仲間が来てくれることを信じて、空をとぶ練習をしたわ。

何度失敗しても、決してあきらめなかった。でも、冬が来るまでにとべるようにはならなかった」