なぜ私は、このことに今まで気が付かなかったんだろう。


「……立樹くんはもう、この物語の続きを自分で作っちゃったもんね」


「え?」


彼は綺麗な目をぱちくりさせ、眼鏡の位置を直していた。

私は、立樹くんと今まで過ごしてきた時間を思い返しながら話を続ける。



「だって立樹くんは、私っていう誰かのためにがんばろうとしてくれたし」




 私へのいじめを見てきっと、なんとかしようと思ってくれた。





「自分の可能性を見つけて、できることをやってくれたし」




私の物語だと知ってこっそりと絵を描いた。


僕はこの物語が好きだよっていうメッセージを伝えるために。理解者が、仲間がここにいるよって、教えるために。



また、隠されたものを探して私のわかるところに置いてくれた。


絵は得意なのに不器用で、バレバレだったけど。





「最後には、勇気を振りしぼってくれたし」


ノートを奪い返すために、大きな相手に立ち向かってくれた。



そのときの『僕らの宝物なんだ』と言う叫びは、今でも私の耳に鮮明に残っている。



そう言ってくれたとき、私の心は本当に救わ
れた。


自分より大きい相手を目の前にしながらも、勇気を出してふたりの名誉を守ろうとしてくれたことが本当に嬉しくて、

私は泣き崩れたのだ。



「だから本当にありがとう。立樹くん」


 立樹くんが、どうかこの立樹くんのままでいてくれますように。


不器用だけど、誰よりも優しくて、勇気があって、すごい力を秘めてる、彼のままでーー。